
税務上、投資ファンドを利用する最大のメリットは、投資物件から利益が生じた場合、それらを投資家に分配する際に二重課税を排除することができることです。一例として、「投資事業有限責任組合」、「民法上の任意組合」、「商法上の匿名組合」、「海外LPS」、につき、それぞれの特徴を比較しました。それぞれのニーズにより使い分けが必要となります。
| 項目 | 形態 | |||
|---|---|---|---|---|
| 投資事業有限責任組合 | 任意組合 | 匿名組合 | 海外LPS (Limited Partner Ship) | |
| 準拠法 | 投資事業有限責任組合契約に関する法律 | 民法 | 会社法 | 各国法律による |
| 組織形態 | 二以上の当事者による共同事業契約 | 二以上の当事者による共同事業契約 | 営業者と組合員との間による営業から生じる利益分配契約 | 各国法律による |
| 日本での登記 | 要 | 不要 | 不要 | 不要 |
| 日本での監査 | 要 | 不要 | 不要 | 不要 |
| 共同事業性 | 弱 | 強 | 弱 | 契約による |
| 財産の帰属 | 投資家 | 投資家 | 営業者(投資家では無い) | 投資家(又は組合:各国法律による) |
| 投資損益のパススルー課税(二重課税回避)の有無 | 原則としてパススルー課税 | 原則としてパススルー課税 | 原則としてパススルー課税 | 任意組合に類似する場合に限りパススルー課税が認められるものと考えられる |
| 分配金支払時の源泉所得税の徴収義務 | (居住者) 源泉徴収義務無し (非居住者) 源泉徴収義務無し(但し、日本国内にPEを有する非居住者については、一定の証明を受けている場合を除き、源泉徴収義務有り:20%) |
(居住者) 源泉徴収義務無し (非居住者) 源泉徴収義務無し(但し、日本国内にPEを有する非居住者については、一定の証明を受けている場合を除き、源泉徴収義務有り:20%) |
(居住者) 源泉徴収義務有り:20% (非居住者) 源泉徴収義務有り:20% |
原則的にはありませんが、国内で事業を行っているとみなされた場合には、左記の「投資事業有限責任組合」や「任意組合」と同様の取り扱いとなります。 |
| 組合所得に関する法定調書の提出義務 | 有り(組合員所得に関する計算書) | 無し | 無し | 無し |
| 出資者の責任 | 無限責任組合員:無限責任 有限責任組合員:有限責任 |
無限責任 | 有限責任 | 原則として有限責任(各国法律による) |
| 業務の執行 | 無限責任組合員 | 原則として各組合員 | 営業者 | 原則としてGeneral Partner |
財産を誰に帰属させるか、誰が業務を執行するのか、出資者に対してどのような課税が行われるのか、運営コスト(監査、登記の要否)等を考慮して選択します。詳細につきましては、お気軽に弊社へお問い合わせください。
Q1で紹介した各ファンドは、計算期間毎に、各組合員に対して、各組合員別に案分した決算書を配布する必要があります。さらに有責組合については、毎年1月に、税務署に対し、組合員名、各組合員に帰属する財産債務や損益等所定の事項を記載した調書を提出する義務があります。
Q1で紹介したパススルー課税の適用を受ける各ファンドについては、投資家は、ファンドから分配金を収受していない場合であっても、ファンドの損益が確定した時点で、自己に帰属する損益につき申告納税を行う必要があります。従い、実務上は、ファンド運営者は、ファンドで利益が発生した場合には、速やかに資金を各投資家に分配し、各投資家の納税財源を確保する必要があります。
できます。但し、その法人組合員が、組合に係る重要な業務の執行の決定に関与し、自らその執行(契約締結交渉等)を行う者で無い場合には、下記の組合損失については、損金計上すること処理することができません。
| 組合契約 | 損金処理できない組合員損失 |
|---|---|
| 組合債務の責任の限度が実質的に組合資産の価額とされている場合 | 組合員損失のうち、当該組合員の出資額を超える部分の金額は、損金の額に算入しない |
| 組合事業に係る収益を保証する契約が締結されていること等により実質的に組合事業が欠損にならないことが明らかな場合 | 組合員損失は、損金処理できない |
金融商品取引法の施行によって、任意組合や匿名組合等の自己募集についても原則的に第二種金融商品取引業者の免許を取得しなければならなくなりました。第二種金融商品取引業者とは、投資組合の持分といった比較的流動性の低い有価証券の売買等を行う業者のことを言います。
平成21年度税制改正により、外国の投資家が下記要件を満たしている場合には、日本にPE を有しないものとされ、例えば、外国の投資家が、ケイマン籍のLPSを通じて所有している日本の株式について生じた株式譲渡益は、日本で課税されないこととなりました。
1、有限責任組合員であること
2、投資組合の業務を執行しないこと
3、投資組合財産に対する持分の割合が25%未満であること
4、無限責任組合員と特殊の関係のある者でないこと
5、国内に投資組合の事業以外の事業に係る恒久的施設を有しないこと
本改正により、日本と租税条約を締結していない中東諸国等の投資家については、対日投資により生ずる株式譲渡益は、日本では非課税となりますので、より多くの投資機会が期待されることになりそうです。
上記により日本にPE がないと判定された場合であっても、当該外国の投資家が、過去3 年以内に、日本法人の発行済株式総数の25%以上を有し、その年度に発行済株式総数の5%以上の株式を譲渡した場合には、日本での株式譲渡益につき、日本で課税対象となります(法人税のみ)。
尚、25%、及び5%の判定は、外国人組合員ごと(組合ごとではありません)に行うこととなりました(平成21年度改正)。また、租税条約を締結している国については、上記と異なることがありますので、注意が必要です。
投資ファンドスキームの関係当事者の誰か一人が倒産したとしても、投資物件(株式・不動産等)が債権者等から差し押さえられない様、投資物件を各者の倒産から隔離しておくことを意味します。例えば、チャリタブル・トラスト方式を利用し、実質的な所有者が誰もいない会社(SPC)をケイマン諸国に作り(=ケイマンSPC)、ケイマンSPCが国内の投資案件に出資するケースがあります。現在は、有限責任中間法人を利用し、倒産隔離効果を得る方式も広がっております。
例えば、ケイマン諸国の弁護士等が発起人となり1000ドル程度の資本金でケイマン諸国にSPCを設立し(=ケイマンSPC)、その議決権株式を全て信託会社に譲渡します。信託会社は、同時に「信託宣言」という英米法特有の制度を利用し、「信託期間満了時に、ケイマンSPCの残余財産の全てを慈善団体に寄付する」ことを宣言します(実務上は、最終的に慈善団体に寄付する金額は、当初の出資金額(≒1000ドル)相当額が多いようです)。この結果、ケイマンSPCの議決権株式の形式的な所有者は慈善団体となるため、実質的な所有者が誰もいない状態が作られます。投資ファンドの運営会社等は、ケイマンSPCに投資開始用の資金を出資しますが、ケイマンSPCは、無議決権株式を発行するため、投資ファンドの運営会社等とケイマンSPCの資本関係は分離されます。
平成18年に成立した金融商品取引法(金商法)では、投資家保護の観点から、投資家の自己募集や、出資・拠出を受けた財産の自己運用(有価証券等投資に限ります。)を業としている者に対して、下記の金融商品取引業の登録を受けることを義務付けております。
| 業務内容 | 必要となる登録 |
|---|---|
| 流動性の低い金融商品(ファンドの出資も含まれます)の販売・勧誘業務 | 第二種金融商品取引業 |
| ファンド運営者による投資財産の運用業務有価証券等への投資運用業務 | 投資運用業 |
尚、上記の登録を受けるための主な要件は下記の通りです。但し、1人以上の適格機関投資家(金融機関、10億円以上の出資者等)かつ49人以下の一般投資家を相手とする私募については、上記の登録義務は課されません。「適格機関投資家等特例業務の届出」により、ファンドの組成、投信運用を行うことが可能となります(俗に「プロファンド」と呼ぶこともあります)。特に「投資運用業」の登録は、コンプライアンス部門の独立等、ハードルが大変高いため、実務上は、適格機関投資家に出資を依頼し、上記登録業務の免除を受けるケースも多く見受けられます(この場合でも法令遵守体制の整備は不可欠です)。
| 第二種金融商品取引業 | 投資運用業 | |
|---|---|---|
| 概要 | ファンド出資の販売勧誘業務 | ファンド投資財産の運用等 |
| 組織形態 | 法人又は個人 | 株式会社(取締役会設置) |
| 最低資本金 | 資本金 1000万円 個人は営業保証金として供託 |
5,000万円 |
| 最低純資産額 | - | 5,000万円 |
| 主要株主規制 | 無 | 有(主要株主 |
| 人的規制 | ・コンプライアンス部門が、営業部門から独立している ・経営者、役員が金融商品取引業、リスク管理について十分な知識経験がある ・内部管理の責任者が、適切に配置されている 等 |
・資産運用部門、内部監査部門、コンプライアンス部門、管理部門等が独立している ・上記各部門にそれぞれの業務について十分な知識及び経験を有する役員もしくは担当者が配置されている 等 |
1、TMK
資産流動化法に基づく特定目的会社(TMK)が考えられます。不動産等の特定資産の流動化業務だけを行うものとして認可を受けた上で設立される会社ですが、一定の要件を満たす場合は、TMKが投資家に支払う配当金は、TMKの課税所得の計算上、損金に算入することができるため、投資家にとっては、パススルー課税と同様の効果を得ることができます。
2、匿名組合
不動産特定共同事業法に基づく許可を得た法人が営業者となり、投資家と匿名組合契約を結ぶスキームも考えられます。投資不動産の所有権は営業者に帰属しますが、投資家は、その不動産から得られる賃料収入や売却益から配当を受けることができます。匿名組合スキームの場合も、投資家にとっては、パススルー課税と同様の効果を得ることができます。